フェーズドアレイというと戦闘機やイージス艦のレーダーに使われているのが有名ですが,
平面上に多数配置したレーダー素子により全方位の空間情報を一度に探索するというものだと思います.三次元レーダーというところでしょう.
通常のレーダーはくるくる回りますよね.アンテナ方向の情報しかとれないので,全方位を計測するためにはアンテナを回す必要があります.
でもフェーズドアレイ・レーダーだと計測の開始と終了にタイムラグが無く,一度に半球面のデータが得られます.回転の機構も不要になります.
非常に難しい技術なので,実用化されている分野が限定的です.
http://www.weblio.jp/content/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%83%89%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC水域計測で考えてみると
例えば電磁流速計だとセンサーの1点の情報しか分かりません.鉛直分布を計測しようとしたら,水深方向にセンサーを多数配置する必要があります.
超音波流速計だと鉛直分布を計測できます.これでやっとz方向1次元です.船に乗せて一直線上を走ればx−z断面の分布が分かるので,二次元になります.
もしセンサーをy方向に揺らしてy−z断面の流速分布を計測しながらx方向に走行することができれば,三次元になります.
しかし,首を振ったり走行するのに時間がかかりますから,計測の開始と終了にタイムラグが生ずるので擬似三次元という感じです.
もしフェーズドアレイADCPがあれば,川のど真ん中にセンサーを浮かべておくことで,xyz方向の全ての流速が一瞬で計測できると言うことになり,非常に画期的です.
で,カナダの学会に参加したとき,ADCPの展示ブースになにやら新しいセンサーがあったので,営業マン(米国人)に聞いてみたところ,なんと,フェーズドアレイADCPが完成したと.
8年くらい前から開発中という情報は得ていたのですが,いよいよ完成したようです.
http://www.rdinstruments.com/riverray.aspxすげー
これ1台で3次元空間の流速分布が計測できる!!
と感動して営業マンと話してみると,どうも雰囲気が違う.
平面に1000個くらいの素子を配置して,これで4ビーム分のデータを取るんです,とか言ってる.
意味がよく分からん.
従来の4ビームと計測内容は同等ですが,精度や操作性が格段に向上しました,とか言ってる.
なんで従来の目玉4つADCPと同じなんだ?それだと水深方向の1次元では?
私の英語力の限界なんだろうと思って諦めて帰ってきました.きっとすごい流速計なんだ.
帰国してみてから日本代理店の人に聞いたところ,
「営業マンの説明で合っています」
「???それってフェーズドアレイなの?」
「フェーズドアレイみたいなものではありますが,一般的なイメージのフェーズドアレイとは異なるかも知れません」
「どのへんが?」
「従来は4つのセンサーでしたが,これを多数の素子に分割して平面上に配置しました.フェーズドアレイ技術は使っていると思いますが,得られるデータは従来と同じです」
「詐欺っぽいね」
「米国本社にそう言っておきます.勘違いされるからやめた方がいいって」
もともと本当の意味でのフェーズドアレイ流速計を作りたかったらしいのですが,まだ技術的にそこまでたどり着けないとのことでした.軍事用レーダーなんかとは開発費が雲泥の差ですから,仕方ないのかも知れません.
今後に期待です.